今回から数回に分けて主にヨーロッパにて先行していた、自動車産業におけるモジュール化の流れに関して時系列に分類し、時代考察を加えたいと思います。モジュールの先行研究として、元広島大学教授の日野三十四氏の研究をベースにご紹介したいと思います。
1950年代から1970年代におけるのモジュール化先行企業は、スウェーデンのトラックメーカーであるスカニア社であったと日野は報告しています。
日野(2013)によると「スカニアは1930年代からモジュール化を推進し、1950年代にモジュール化設計システムをいったん完成させた」と説明した。しかし1960年代に大規模な品質問題が起こった際、部品の共通化を行っていたために大規模なリコールとなった。しかしながら1970年代には品質要素とモジュール化の関係を明確にし、最終的なモジュール化手法を確立した。スカニアの手法は、事前に少数のモジュラーコンポーネントを設計しておき、その組み合わせを変えるだけで多様な製品を設計する手法であり、多品種少量生産であるトラックの製造において、非常に有効な手段であった。結果スカニアでは他社と比較し圧倒的な高収益体質となった。」と説明されています。
この当時トラックにおいてモジュール化が先行した理由は、トラックが多品種少量生産であったという特徴と車体の骨格の構造的条件がモジュールに適していたという事も言えるでしょう。乗用車で主流となっているモノコックボディーは車体全体で構造上の剛性を確保しなければなりませんが、トラックに採用されるラダーフレーム構造は、フレームのみで剛性を確保する事が出来るため、モノコックボディーのように車の強度に影響する車体デザインの調整を行うことなく、フレーム上にモジュールを組み合わせることが可能であった為と推測されます。
次回は1980年代以降の歴史を振り返りたいと思います。
参考文献
日野 三十四(2013) 「自動車産業のモジュール化の動向と展望」 モノづくり研究所イマジン