前回に引き続き今回も自動モジュールの歴史的背景について説明したいと思います。前回参照しました日野(2013)に加えて今回は長谷川(2013)の研究論文を参照していきたいと思います。
長谷川(2013)によると、「この時期のモジュール化の主目的は、調達・生産のコストダウンが主目的である」と説明しています。 「先行していたVW社は、1993年にOpelから招聘した購買担当副社長のLopez氏の主導のもと、日本の自動車メーカーに倣い強烈なコスト削減をサプライヤーに要求した。しかしながら日本の自動車メーカーのように、コストダウンの為のサプライヤーへの指導・協力を伴わず、ただやみくもにコストダウンを要求した為、サプライヤーからの反発を招いた。その後自社に比べ労務費の安いサプライヤーにアッセンブリー工程の一部を外注した」。 当該モジュールのサプライヤーはフォルクスワーゲンの工場に隣接するモジュール工場を設立し、そこからJIT¹納入を行う方式を取った。いわゆるサプライヤーパーク方式である。この時期のモジュール化は、藤本・武石・具(2001)らの分類によるところの、②「生産のモジュール化」及び③「企業間システムのモジュール化」に該当する。「生産及び企業間システム」のみのモジュール化においては、モジュール・サプライヤーには、サブ・アッセンブリー部品の調達・品質管理・シーケンシング・デリバリーの能力と、健全なな財務能力が要求される。このように顧客自動車メーカーのサプライヤー・パーク内に自社アッセンブリー工場に投資し、自給・支給²に関わらず、Tier2サプライヤーの管理を行えるサプライヤーがモジュール・サプライヤーとしての地位を固めたのがこの時代であります。
続いて2000年代の特徴は部品の機能を超えた統合を図る、いわゆる「インテグレーション」を行い部品点数の削減や軽量化を行うという点で1990年代より進化しています。主なモジュール化製品はフロント・エンド・モジュール、コクピット・モジュール、ドア・モジュール、リフトゲート・モジュールなどです。この時期カナダのメガ・サプライヤーであるマグナ・インターナショナルや日本の日立化成では、金属製がメインであったリフトゲートを樹脂化した「リフト・ゲート・モジュール」の量産化に成功し、部品点数の大幅な削減と重量低減を達成している。
¹ JIT ”Just In Time”の略。トヨタ生産方式である「かんばん方式」をリーン・生産方式に置き換えた用語
² 自給 1次サプライヤーが自社で2次サプライヤーを選定し調達する事、支給はその対義語で顧客である自動車メーカーが子部品のサプライヤーを選定し1次サプライヤーに供給する事
参考文献
武石彰・藤本隆宏・具承桓 (2001)「自動車産業におけるモジュール化-製品・生産・調達システムの複合ヒエラルキー」ディスカッションペーパー CIRJE-J41
長谷川洋三 (2013)「自動車企業の国際競争力分析―モジュール化の進行と企業間関係の変化を中心に」千葉商科大学